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2019.6.24-25 知床連山縦走

登山道整備と植生調査で知床連山を縦走。例年より残雪は少なく、早くも多くのお花を楽しめます。

知床山考舎は今年の知床連山の登山道管理業務を環境省から受注しています。今回は硫黄山方面から入山して植生調査。調査内容は年度末の公開を待っていただくとして、ここでは縦走路の状況をお伝えします。

例年なら今時期でも雪で埋まっている硫黄川ですが、断続的にしか残っていません。滝も口を開けているので高巻きを行きましょう。

大岩分岐から硫黄分岐の間の残雪はまだ残っていますが、硫黄山山頂に向かう直登部分は下部3分の1は夏道出ました。矢印ペイントに従ってください。周囲の植物は踏み荒らさないように。硫黄分岐へのトラバース部分はまだ急傾斜で残っており、下方に岩場も出てきましたから滑落注意。日中はステップを切れますが、早朝や気温が低い日は固く締まっています。

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硫黄山第二前衛峰の中ノ廊下側の残雪はまだ大きく残っています。今年は残雪の末端の平坦部がなく、傾斜のまま地面が出てしまっているので滑落注意です。硬い氷が縞状に入っているので油断していると足元すくわれますよ。

第一火口フードロッカー
第一火口フードロッカー

第一火口はずいぶん雪が少なくなり、雪渓下部は日本庭園様になりとうとうと水が流れ出しました。テントサイト平坦部は雪渓の末端と雪解け水で冠水しています。14日は雪の下に埋まっていたフードロッカーもすっかり露出しています。第一火口分岐との連絡は写真の奥の雪渓の右側、ちょうど日の当たっている部分を通過します。雪の上で行動できる靴、そして滑落に対応できるようにしておきましょう。

二ッ池は例年同時期に比べれば少ないものの水をたたえています。オッカバケ岳への斜面の残雪もロックガーデン部分と山頂付近に。

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サシルイ岳

ミクリ沼はまだ雪の中(写真右側の残雪部分)ですが、雪解けが進んだ割に雨が少ないためでしょうか、例年水路状になる湿原部分の登山道は歩きやすい状況。これからの雨次第でしょう。サシルイ岳の大雪渓(写真中央部分)はたっぷり残っていますが、傾斜は強くないので楽しめます。

サシルイ岳南西斜面のお花畑上部に残雪があります。お花畑を踏み荒らさないように歩いてください。三ッ峰テントサイトは水場部分など中央部に雪があるものの、テントを張る部分には乾いています。前回縦走した6月12日時点でガリー化していた部分の周辺は残雪がなくなりましたが、流下した土砂がお花畑を埋めてしまっていました。登山道も深くえぐれて歩きづらくなっていますが、周囲の植生部分には配慮をお願いします。

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羅臼岳ニノ肩雪田

羅臼岳岩清水も少ないながら滴っています。ニノ肩雪田はまだ残雪あります。今後の融雪によるお花畑保護のため夏道に沿ってL字型に歩いてもらうようガイドロープやテープ付きピンを立てています。

例年より早いペースで高山植物が開花しています。縦走路のシレトコスミレも多く見られます。  縦走して羅臼岳から下山中だった知り合いのパーティーは、あまりにも多くてシレトコスミレではないと思って写真を撮らなかったとのこと>_<残念でした。

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シレトコスミレ、多く見られるとはいえ、登山者の踏み込みやエゾシカなどによる食害も見られ、大きな株を目にすることは少なくなっています。

撮影や観察のために、登山道から外れない、崩れやすいので身を乗り出すのに足や手をかけない。これくらい、という行動でざらざらと砂礫が崩れて植生部分が失われています。

以前であれば盗掘防止のためにシレトコスミレやコマクサの映像は出さないというのが不文律でしたが、現在はSNSなどで多くの人が美しい姿をアップロードしています。どこで撮影したのか、撮影するために何をしたのか、見る人が見ればわかります。ある意味で衆人環視で監視されていると言ってよいでしょう。植生環境を守るために、一人一人が登山のモラルとマナーを考えてほしいものです。

(滝澤:知床山考舎 代表)