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2021.7.5-6 知床連山縦走

お花のシーズンに合わせての縦走ツアーでしたが、悪天候で二ッ池から引き返しとなりました。

シレトコスミレなどお花のシーズンに合わせて例年催行されてきた旅行代理店のツアー登山。昨年(2020)はCOVID-19により催行されませんでしたが、今年は代理店もガイドもいろいろ注意をはらいながら催行。

1泊2日なので岩尾別登山口から早朝の出発。盛夏の花に移行してきた大沢から、山頂近くに咲く花まで多くの高山植物にみなさん大喜びでした。

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羅臼岳山頂で知床連山から知床岳まで見えていた展望も、羅臼平に戻る間に雲が流れはじめ、縦走路に入るとガスと強い風に。

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二ッ池テントサイト到着までは雨も本降りではありませんでしたが、それでもガスで濡れた状態。途中のサシルイ岳は地形で収束した風で歩くのが困難なほど。予想よりも早く天気が崩れました。翌日は行動できる天候と予想しての行動でしたが、雨も止まず風も残ってしまい、硫黄山方面への行動は取りやめ岩尾別方面に戻ることに。

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撤退を決めた要素は次のとおり。

  • 羅臼平から二ッ池は稜線の凹状地形により風を避けられる場所もありますが、二ッ池から先の硫黄山方面は旧硫黄山の火口縁を歩くこととなり、途中には地形により風が収束して吹き向ける風衝地や中の廊下があること。
  • 中の廊下から硫黄山第二前衛峰への登り返しの雪渓と、硫黄山本峰の硫黄分岐のトラバースと山頂への雪渓が残っていますが、これらの急傾斜の雪渓が、雨が止まないことで柔らかい雪が洗われて硬くなり部分的には氷が露出すること。
  •  大岩分岐から沢出合までの硫黄川の中のルートは通常は水の流れはほぼないが、雨量が多くなったために水量が多くなっていること。
  • 廃道にしているクラシックなルートを通ることも検討できるが、上記の要素全てはクリアできず、このルート自体も増水により通行が難しい可能性があること。
  • 昨日と同じルートを戻ることでお客様は安心感があること。

実際、昨日通ったルートもところどころ水が流れ、雪渓では軽アイゼンも装着、サシルイ岳は昨日同様強風でした。羅臼平まで戻るとみなさまほっと一安心。再び大沢のお花畑を楽しんで下山しました。途中からは青空も見えだし濡れていた雨具も乾いていきました。

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登山口まであと3分もかからないところで、ヒグマが木に登ろうとしていました。ちょうど登山道が深くカーブしている内側にいます。こちらに気がついていますが動きません。こちらが見ていればヒグマも動けないので、姿が見えない位置まで登り返して、ヒグマがそこを離れてくれること待ちます。時間をおいて見に行ってしばらく声をかけるなどしても姿は見せず、いなくなったようなので、お客様のところに戻って下山を再開。なんとヒグマも戻ってきていて地面に鼻を擦り付けて何か探っている様子。声かけや手を振ってのアピールで、こちらに顔を向けるなど気がついていますが興味がない様子。静かに通り過ぎて登山道を外れて獣道から木下小屋の裏に下山しました。

咲き誇るお花、稜線の強風、雨のテント泊、水路になった登山道ヒグマとの遭遇、と、ワイルドすぎる知床連山縦走になりました。みなさまにはぜひ再挑戦をしていただき、今度は知床連山のやさしい姿を楽しんでいただきたいと思います。

(滝澤:JMGA登山ガイドステージIII)