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2020.9.13-15 知床連山縦走

昨年登った羅臼岳からの風景が頭から離れず、初めてのテント泊で知床連山縦走に挑戦されたクライアント。最高の秋の縦走になりました。

今回は知床硫黄山側から羅臼岳方面への縦走に。今シーズンは三ッ峰や二ッ池のテントサイトで採水できない状況なので、水を荷上げするのを最小限にするために採水可能な第一火口テントサイトを1泊目に設定。

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over70で初めてのテント泊、それもCOVID-19で今シーズンは登山の回数も少なくなっているということで、ガイドを断れるかもしれないと、なかなか依頼の連絡ができなかったというクライアント。計画にゆとりをもたせ、山に入ってからの行動も確認しながらゆったり目に。岩場は苦手ということで硫黄山はパス。

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第一火口の雪渓で採水。到着時はすでに雪渓に日が当たらなくなって融け出していた流れは消えかけて黒い跡しか残っていません。氷からしずくが落ちる程度になってしまっていました。

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何とか今晩から明後日下山するまでの水を確保。水筒など無駄が出ないよう一部はその場で浄水器にかけて、空いている容器を満水にしました。

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快適な第一火口テントサイトですが、この夜は風が抜けてテントも煽られてクライアントはよく眠れなかったとのこと。それでも明け方近くに風が弱くなってからは短いけどぐっすり眠れたそうです。フードロッカーに食料を取りに行くと朝焼けが綺麗でした。

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あわよくば夕食と朝食で使った分を補給できないか雪渓をのぞいて見ましたが、昨日採水できた場所には薄氷がはっていました。水溜りなども乾ききっています。日中気温が上がり、陽が当たらなければ融け出さない状態です。雪渓を当てにしても到着時間が遅いと採水できない危険がある時期が例年より早くやってきました。

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地形や雲を眺めるのが好きなクライアントにとって二日目も最高なコンディション。中ノ廊下からの知床岳やウブシノッタ川源頭部の景色を写真に収めていました。

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秋の空気になって遠くまですっきりと見えます。国後島も細かいディティールまで見えていました。サシルイ岳の登りの途中では国後島の爺爺岳(1772m)の右中腹に択捉島のベルタルベ山(1221m)の山頂がのぞいていました。知床半島から尾岱沼、根室半島の海岸線までもはっきりとわかるほど空気が澄んでいました。

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二ッ池はカラカラに干上がっています。写真の右枠外、ハイマツや崖を下った羅臼側に雪渓が残っています(南岳から見るとよくわかります)が、これにたどり着くには時間をかけて藪漕ぎが必要です。仲間が脱水症状に陥った、など危急時は選択肢になるものの、ここに至り採水して戻ってくる時間でヘリコプターで救助、収容してもらえるでしょう。

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丸一日、ゆっくりと歩いて三ッ峰テントサイトへ。尾根を越える風はテントサイトには当たらずに静かな夜に。その分冷え込んだので、クライアントには水筒で湯たんぽをつくって安眠してもらいました。三日目の朝、朝焼けに照る三ッ峰。

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ヒグマの痕跡にあまり出会ってきませんでしたが、出発早々ハイマツの実がメインのフンが登山道に。ナナカマドやコケモモ、ガンコウナランなども実っているので登山道沿線全てが餌場でもあります。テントサイトや登山道の整備のために積み上げてある土のう袋ですが、何箇所か袋を動かされていました。地中にある虫などを探したのでしょうか。

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晴れ女を自称するだけあって三日間とも素晴らしい天気。羅臼岳ももう一度登りたい気もするけど、下山後に長距離を移動するから無理しないで下山するという判断をされたクライアント。これまで日帰りでしか考えられなかったところにテント泊という新しいスキルが加わり登りたい山が出てきました。いくつになっても無理せずに安全第一に、新しいことへも挑戦、と、いろいろ考えながら計画できるのも登山の魅力ですね。ガイドはそんなみなさまのお手伝いを請け負いますよ。今回のクライアントのように思い切ってご連絡ください。

(滝澤:JMGA登山ガイドステージIII)