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2020.8.13 幌尻岳 チロロ林道コース

今年は主要な登山コースが使えない幌尻岳。チロロ林道コースを日帰りで往復してきました。

2020年新型コロナウイルスの感染拡大防止のためのシャトルバス運行を取りやめざるをえず入山システムが機能しなくなった額平コース。2018年の大雨で林道が崩落し工事が継続中で通行できない新冠陽希コース。2016年の台風で林道が流出してしまった伏見岳避難小屋からのコース。

というわけで、幌尻岳を登るためにはチロロ林道からのコースしか残されていません。そして、この、コースはかろうじて日帰りに収めることも可能、できれば2泊3日が楽しいコースです。また、COVID-19対応ガイドラインでも長時間の計画を避けたり、難易度を下げるなどの対応が必要となっています。

今回はクライアントが1名であること、当社のリピータで体力や技術がわかっていること、当社の考え方などについて理解いただいていることなどから、日帰りでの山行で計画しました。

IMG_6380チロロ林道のゲートからヘッドランプを灯して林道歩きです。足元が明るくなる時間を逆算して出発して、取水施設に到着すると消灯できるようにしました。ヘッドランプ行動は影が強調されて足元の障害物に引っかかりやすいのでできるだけやりたくないのです。ヘッドランプをしまって軽いヤブ漕ぎと渡渉に備えて身支度を整えます 。

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若干水量は多めだったものの石を伝って渡渉でき靴の中は濡らさずに済みました。沢から尾根に取り付いてぐんぐん登っていきます。トッタの泉を越えてヌカビラ岳手前の岩場が見える頃には風にガスが飛んでいるのがわかるようになってきました。

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時折ガスは抜けて北戸蔦別岳やお花畑の展望が広がります。

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急がず焦らず、お花も写真に収めながら。

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尾根上は強い西寄りの風でしたから尾根の東側、例えば北戸蔦別岳山頂東側のテントサイトに入るだけで無風状態に。私たちを追い越した登山者はみなさん風が強いからと戸蔦別岳で引き返して下山していきました。各自の服装や装備、経験などから判断したことは適切であったと思います。みなさん初めて通るコースということで、戸蔦別岳から先に風がどうなるかは想定できなかったのだと思いますし。

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戸蔦別カールにヒグマ成獣単独の姿。この他に成獣1+幼獣1の親子とみられる姿もありました。

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戸蔦別岳から幌尻岳の肩へ下り始めると、今回の風向きでは山体と尾根にぶつかって風は弱まり、七つ沼カールを横に見る尾根ではハイマツが高くて体が隠れるなどで風の当たりは柔らかに。肩から幌尻岳へも風は北カールから駆け上がり尾根の上に抜けてしまうので東カール側は無風でした。

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ほぼクライアントが想定した時間に到着できました。クライアントはこれで日本百名山達成です。おめでとうございます!ここまで事故なく登ってきたクライアント、この日もゆっくり行きましょうと言っていました。一層慎重に下山します。

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山頂では展望が利きませんでしたが、帰路では水が満ちる七つ沼カールやエサオマントッタベツ岳、札内岳、十勝幌尻岳、カムイエクウチカウシ山などが姿を見せてくれました。

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戸蔦別岳をすぎると雲に覆われてしまいました。路傍の花々を写真に収めながら下山。それにしても、他のコースが使えないこともあって多くの登山者がテントを張っていました。北戸蔦別岳山頂からヌカビラ岳の間にあるコルや平坦部には全てテントが張ってあるか張った形跡の踏圧を受けたお花畑を見ました。一つのコースに集中しているために生じている問題点と言って良いでしょう。

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順調に下山することができて明るいうちに渡渉点を全てクリア。取水施設の直前でヘッドランプを点灯しました。ヘッドランプの他にガイドは手持ちのライトで行き先を示したり広く照らして歩行を誘導しました。林道は余裕があったのでちょっと早足にすることができました。谷の上空に星が光る下、ゲートを抜けて駐車場に到着。おつかれさまでした。

日本百名山を達成したクライアントは新たな目標を教えてくれました。これまで同様、無理せずゆっくり安全に山登りを楽しんで行かれる目標でした。いろいろな山登りがあります。それをサポートするためにガイドがいます。みなさまの山登り、どうぞご相談ください。

(滝澤:JMGA登山ガイドステージIII)