穏やかな登山日和の羅臼岳。とはいえ完全に冬山ですよ。山頂に立つためには前爪の付いたアイゼンが必要です。
今年の冬は雪が少なく、羅臼岳の様子も例年の5月中旬のよう。岩尾別登山口から560m岩峰あたりまでは登山道も断続的に出ています。
いつもなら夏道が雪の急傾斜に隠されて通れないので最上部を越える650m岩峰もハイマツが立ち上がっています。
ここからは登山道は積雪の下。地図読みが必要です。長官山のトラバースはヤブが立ち上がってうるさいです。木隠沼もすっかり水が溜まっています。
弥三吉水は雪の下。ここから一気に岩清水にルートをとって帰りはスキーというのがこの時期の醍醐味なのですが、今年は仙人坂やその上のヤブの立ち上がりを見るといまいち。大沢に向けて極楽平を横断します。GPS頼りの方もいるようですが、この時期は夏道のとおり進むことは現実的ではないですし危険です。冬のルート取りができる知識と技術が必要です。
大沢の積雪も少なく、例年なら雪に隠れている岩が埋まっていなかったり、すでに壁面が露出していたり。第一の岩場から第二の岩場の間の急斜面の雪も少なく、上部左岸にできてることの多い吹き溜まりの膨らみもない状態。夏山シーズン初期には嫌な角度で残りそうです。
この日は気温が低くキックステップも効かないのでアイゼンを履いて行動。振り返るとオープンしたばかりの知床五湖が見えます。まだ湖面に氷が残っているのがわかります。
羅臼平は風が抜けるのでもともと積雪は少ないですが、フードロッカーは半分埋まっていて、ふたを開けると中は雪が吹き溜まっていました。
この朝は氷点下となっていたのでアイゼンを履いて埋まることなく羅臼平から山頂まで行動。第一の肩から第二の肩への雪田はしっかりしていて今回の下りでも途切れずにスキーを楽しめました。
山頂は氷の塊。アイゼンとピッケル必携です。
山頂から知床岬方面。三ッ峰から大沢にかけて発達する積雪が少なめ。三ッ峰はハイマツも露出していてこのあとの冷え込みでの枯れなどが心配になります。
山頂から半島基部方面。天頂山や知西別岳の尾根筋のハイマツが立ち上がっています。ゴールデンウィークの天頂山や羅臼湖のハイキングや知西別岳のトレッキングのルート取りは工夫が必要ですね。知床横断道路は4月26日に開通予定です。
山頂の岩場から一段降りたところから今回は山スキーで下降。第二の肩から羅臼平、大沢、極楽平、650m岩峰まで一気に下降可能でした。今回は携帯トイレブースの冬囲いの点検のため下降ルートから外れて銀冷水に寄っています。大丈夫そうですね。
登りの時はキックステップが入らないほどしまっていた雪も午後には腐り、ノサッ、ビシッと目の前でヤブが立ち上がってきます。650m岩峰頂上部もハイマツがバリケードのように立ち上がってしまいました。例年の今頃なら登山口までスキーで滑り降りるのですが、もはや登山道を踏み抜いても歩いた方が早い状態。
積雪が少なく例年の5月中旬の状況ですが、それでもまだまだ冬山シーズンと思ってください。装備、技術が必要ですよ。
(滝澤:JMGA登山ガイドステージⅢ)