毎年、少しずつ知床半島を縦走して知床岬を目指しているお客様。今年は東岳から知床岳を4泊5日で縦走しました。
1日目は羅臼町岬町から入山。森林限界手前を目指しますが風雪があるので標高低めで行動終了。
今シーズンは積雪が非常に少なく、また、この時期にしては気温も高めでササやヤブの立ち上がりなども気にしてきましたが、幸いにしてそれほどでもなく、雪もしまってスノーシューでも歩きやすくて助かりました。
深夜には風も止み、2日目。国後島からすっきりと朝日が昇ります。
昨日は全く姿が見えなかった東岳などもしっかりと見えます。
が、標高1000mを越える頃から稜線は雲にまとわりつかれ体を引き倒されるほどの強風。アイゼン、ピッケルでの行動も耐風姿勢の合間に移動していると言っても良いくらい。
東岳山頂からのウブシノッタ川源頭部の大崩落地形はわずかに覗き込めるくらい。
知床半島最低鞍部であるルサ乗り越えに向かって一気に標高を下げて雲の下に降りて一息。知床岳も雲の中です。
網走や斜里の前からは姿が見えなくなってきた流氷も半島先端部にはまだたっぷり。半島を挟んで羅臼と国後島の間にはわずかに流れ込んでいます。
通過してきた東岳方面はまだまだ強風の雲の中ですが、そこから降りてしまえば下り勾配と歩きやすい積雪に助けられ、前日の遅れ分を取り戻した上に予定のテントサイトより少し先に進めました。
この日もきれいな朝日です。第3日目はルサ乗り越えを通過して知床岳手前までの計画。
ルサ乗り越えは知床半島の最低部。ルサ川〜ルシャ川をつないで船を越えさせて、半島=山を挟んでオホーツク海をつないでいたアイヌの人々に想いを馳せながら、私たちは縦に通過します。
今日は高標高の稜線も風はなさそう。標高の低い場所の移動は気温と日差しでスノーシューの底に雪がついて高下駄状態になります。
いよいよ知床岳が目の前になってきました。今日のテントサイトももう直ぐ。ですが、視認するに知床岳登頂後に下山するために計画していたルートはハイマツの立ち上がりが著しい。明日の天気は朝09時までしか持たず以降は大荒れと予想。
この時点で、明日は台地までは登るものの知床岳にはアタックせずにエスケープルートで下降、風雪の影響を受けない低標高まで移動してしまうことに。荒天での行動を少なくするためにテントサイトをこの日の予定箇所より前進させておきました。知床硫黄山が望めるコルに張ったテントからは夜空に星が、遠くに国後島の灯りがきらめきました。
第4日目、国後島からの朝日が出るとともに風も出てきて時間とともに強くなってきます。
知床岳方面は青空が広がっているので、お客様は山頂が踏めるかもと期待していますが、背後からはどんどん雪雲が迫ってきます。
硫黄山も雲の中に入り残された時間はわずかです。知床岳の台地に到達した0920時に予想どおり暴風雪に捕まりました。視界10m無い中をエスケープルートを使って樹林帯まで下降。
カモイウンベ川右股の渡渉点もまだ雪の橋がかかっており通過できました。雪はヤッケやザックについた途端に水に変わります。テントも設営中にベチョベチョに。今回は気温が高い予報が出ていたのでフライシートを持ってきていましたが、4泊目にして展開、快適な空間となりました。
樹々の上空を抜けていく風の音はまだまだ強いですが、テントに当たる風は弱く朝日も差し込んできた5日目。この日は下山日。遅く起きてゆっくり準備します。
それはカモイウンベ川の橋がかかっていないから。渡渉するためには胴付や特長などの履物を用意するか素足になるしかないわけですが、川の水量が多くなく・流氷が入っていて波が寄せていない・干潮時は、波打ち際を登山靴のまま石や砂利の上をたどって渡ることができることがあります。
今回は前日の計画変更時の連絡で下山場所到着時間を干潮時間に合わせて変更しておきましたが、流氷で波も寄せることなくタイミングばっちりでした。
毎年ほぼ同じ日程で知床にいらっしゃるお客様ですが、腰までのラッセルの時もあればササが立ってカリカリのときも経験してきました。海別岳あたりの裾野の広さに比べて山の両脇の海が狭くなったことに感慨深げでした。次回はどの区間にチャレンジしましょうか?
知床山考舎ではみなさんの知床への挑戦をお手伝いしています。様々なサポートができますからお気軽にご連絡ください!
(滝澤:日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅢ)