知床半島の自然を体全体で味わうことのできる山。それが知床岳です。雨の海岸歩きから始まりましたが、山頂アタック時は良い天気に恵まれました。
一日目、羅臼町相泊から雨の海岸歩きになりました。途中漁師さんと話をしていたら「あっこら辺にクマ出てるから気ぃ付けて(行)け」との情報。普段も地形の陰になる部分では音を立てるなどしていますが、漁師さんの言っていた辺りで声をかけるとヒグマが頭を持ち上げ姿を現しました。距離もあり、そのままゆっくりと斜面を上がって離れて行ってくれたのでそのまま通過。観音岩を回り込みウナキベツ川に沿って登っていきます。青沼から尾根に取り付くと、時に耐風姿勢が必要な強風。しかし、風が雲を取り払い青空が広がりはじめました。
台地上のルートは雪融けなどで水路になっているので長靴で行動。脛までの深さになっている箇所も難なく通過できます。
雪があるとヤブ漕ぎルートが寸断され出入口を探すのに手まどいますが、今回は雪が少なくそちらの苦労はなかったのですが、ヤブをかき分ける苦労は多くなります。
9時間行動で知床沼に到着。野営指定範囲内にテント設営、厳守ですよ。
二日目、テントを撤収し宿泊装備はデポジット。食料もヒグマ対策用の食料コンテナに入れて野営指定範囲から離れた場所にデポジットします。
アタック装備を背負い、やんわりとした朝焼けを受けながら知床沼の湿原を長靴でぬけ、・1132mに取り付いてからは登山靴に履き替えて行動。今日も一日ヤブ漕ぎですが、昨日までと違い登り下りもあるので距離を稼げません。
・1243mの直下からしばらく雪が残っていてくれたのでかなり時間を稼げました。進むにつれ知床硫黄山が見えてきます。背後には国後島が広がります。暑いほどの天気になった知床岳山頂は遠くは霞んでいるものの知床岬方面をはじめ羅臼側や斜里側の海岸線など展望を楽しめました。(トップの写真は知床硫黄山方面)
帰りも登り下りのヤブ漕ぎで時間がかかりますが、知床沼が見えてくると一安心です。湖畔にたどり着くと予定どおり10時間の行動となっていました。「嫌いな木は何かと今聞かれたら、(ハイ)マツと答える」というのがクライアントの感想でした。
三日目、テントを撤収してから朝食にしていたら雨に。濡れたハイマツのヤブ漕ぎでずぶ濡れになります。大地から降りる尾根にさしかかるところで雨が上がり、一日目と違い風がないので安定して下ることができました。足元のスミレも踏まないように気を回せます。
青沼まできたら雨具を脱ごうかと思っていたら冷たい風と強い雨。青沼でしばし休憩してから下り始めると急速に青空が広がりはじめ気温も上昇してきました。新緑と激流の白さとのコントラストなどクライアントも写真撮影を楽しんでいました。
観音岩のロープで確保が必要な岩場に咲くコザクラも一日目はつぼみが多かったものが開花していました。この当たりの岩場や川、急傾斜地はロープを使用して確保しながら通過しました。
天気も良くなったので濡れていたものもどんどん乾いていきます。休憩を長めにとりながらのんびり海岸線歩き。8時間30分の行動で相泊に帰ってきました。「ヤブ漕ぎは全身運動だ」と語ったクライアント。普段の山登りでは体験することのないハイマツのヤブ漕ぎに辟易するも充実していただけた二泊三日テント泊の知床岳でした。
無積雪期の知床岳のリクエストは虫の少ない残雪期と秋季がオススメです。大人数ではヤブ漕ぎ行動であることと野営指定範囲の狭さから対応できませんので、少人数でひっそりと行きたいという方からのリクエストをお待ちしています。
(滝澤)